怖いけどあなたに会いたい - 故人の声はAIで復活するのか? -¶
Author: MikeTurkey, in conversation with claude
Date: 21 Dec 2025
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81プロデュースとElevenLabsが業務提携¶
2025年12月15日、声優事務所の81プロデュースと音声AI企業のElevenLabsが業務提携を発表した。
81プロデュースは創業45年を迎える老舗事務所で、400名以上の声優が所属している。
今回の提携により、所属声優の声をElevenLabsのプラットフォームに登録し、声質やトーンを保ったまま29カ国語への多言語化が可能になる。
背景には、声優の声が無断でAI生成に利用される事例の増加がある。ElevenLabsはデジタル透かしなどの技術で不正利用を防ぎつつ、正規の多言語展開を支援する。
81プロデュースの南沢道義社長は、故人となった著名な声優の声が蘇る可能性にも触れ、「声優とAIは共存しコンテンツが拡大・発展する時代へ進む」と述べた。
日本語の声と多言語化された声を持つ「ハイブリッド声優」という新しい概念も提唱されている。
この記事を読んでふと思ったことがある。
「あの人」の声はまた聞くことができるのだろうか?
81プロデュースに所属していた松来未祐さんを思い出したのだ。
声優松来未祐さんの紹介¶
松来未祐は81プロデュースに所属していた女性声優である。代表作は『ひだまりスケッチ』の吉野屋先生。
弾けるような声(bubbly, lively voice)と、どこまでもサービス精神旺盛な人柄で多くのファンに愛された。
日本では声優がラジオ番組を持つことが多く、彼女もラジオパーソナリティとして人気があり、共演者を巻き込んで笑いを生み出すトークは、聞く者を飽きさせなかった。
本人のブログは飼い猫と食べ物の話ばかりで、「食べるってことは生きるってこと」と語るほど、日常の小さな幸せを大切にする人だった。
2015年10月27日、慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)により38歳で逝去した。
私自身もファンというわけではなかったが一時期ラジオを聴いていたことがあり、
今でもあの声をもう一度聞きたいと思うことがある。
Tip
Hidamari Sketchは、漫画家蒼樹うめ先生の原作。
4期まで制作された。
吉野屋先生は、学校の美術教師。
教師らしくないが、とても美術教師らしく破天荒な(unconventional)先生を演じていた。
Tip
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)とは、極めて珍しい感染症である。
EBウイルスに感染してもほとんどの人は生死に関係しないが、
まれに活発に活動し、死に至ることがある。
現在治療方法が活発に研究されている。
AI美空ひばりの事例¶
ただ、私は気になることがあった。
「AI美空ひばり」の件だ。
一体ここで何が起こったのだろうか?
2019年、NHKは没後30年を迎えた国民的歌手・美空ひばりをAI技術で復活させるプロジェクトを実施した。
ヤマハの歌声合成技術で声を再現し、3DCGで姿を作り上げ、新曲『あれから』を歌わせた。
同年の紅白歌合戦(Japan's annual New Year's Eve music show)では、3Dホログラムとして舞台に登場。
曲の間奏で「お久しぶりです。あなたのことをずっと見ていましたよ」と観客に語りかける演出も行われた。
遺族や長年のファンが涙する一方で、「気持ち悪い」「死者への冒涜だ」という批判が続出。
著名な歌手の山下達郎は「冒涜です」と一言で切り捨てた。
なぜ、故人に会いたいと思うのにこのような反応になったのだろうか?
会いたいけどあなたに会いたくない¶
原因は2つ考えられる。映像化と本人の意思を感じない言葉にあると思う。
映像化はなぜ良くないのか?
ネット上ではロボット工学における「不気味の谷」という批判がされた。それより私が気になったのは、本能的な恐怖である。人は、ゾンビやゴーストを恐怖する。故人に会いたいと思う気持ちがあるが、実際には目の前に現れてほしくないのである。だってそうでしょ?皆さんだって亡くなった祖父や祖母には会いたいと思うでしょうが、実際に目の前にリアルに現れたらこわいでしょうね。
故人の意思を代弁したこと
曲の中で「お久しぶりです。あなたのことをずっと見ていましたよ」と語りかける演出があった。しかし、美空ひばりさん本人がそう思っていたかどうかは誰にもわからない。故人の意思を勝手に代弁することは、冒涜と言われても仕方がないだろう。
では、故人とどのような距離感で接すれば良いだろうか?
このヒントは「イタコ」にある。
イタコの知恵 - 日本の霊媒師が示す死者との距離感 -¶
日本には「イタコ」と呼ばれる霊媒師がいる。
青森県の恐山(Mt. Osore)という場所で、故人の魂を呼び寄せ、その言葉を伝える。
イタコの口寄せは戦後80年ほどの歴史であるが、死者との向き合い方について示唆を与えてくれる。
恐山は火山活動によって形成された荒涼とした風景が広がり、硫黄の匂いが立ち込める。
岩場と湖が織りなす光景は非現実的で、どこか「あの世」を感じさせる。
自然そのものが、此岸と彼岸(The world of the living and the world of the dead)の境界を演出しているのだ。
訪れる人は、この異界のような場所でイタコと対面し、故人の言葉を聞く。
故人の姿は見えない。
声はイタコという媒介者を通して届く。だから幽霊を見る恐怖はない。
それでも、故人とつながっている感覚を得ることができる。
これは、死者との適切な距離感を示す一つの知恵ではないだろうか。
Tip
恐山(Mt. Osore)は、青森県にある日本三大霊場の一つ。
火山活動による荒涼とした風景から「地獄」に見立てられ、
古くから死者の魂が集まる場所として信仰されてきた。
現在でも毎年夏と秋に大祭が行われ、イタコの口寄せを求めて多くの人が訪れる。
Tip
イタコは日本の東北地方に伝わる霊媒師である。
西洋の霊媒師(medium)が霊のメッセージを通訳するのに対し、
イタコは自らの身体に故人の霊を降ろし、故人として直接語る。
依頼者は会いたい故人を指名し、イタコを通じてその声を聞く。
怖いけどあなたに会いたい、その距離感で¶
81プロデュースとElevenLabsの提携により、故人の声優の声が再び届く可能性が生まれた。
しかし、技術的にできることと、すべきことは違う。
AI美空ひばりの事例が教えてくれたのは、人は故人に会いたいと思いながらも、完全に戻ってきてほしいわけではないということだ。
怖いけど会いたい。その微妙な距離感を、イタコという存在は守ってきた。
故人の声をAIで届けるなら、同じ知恵が必要だろう。
映像でリアルに復活させるのではなく、声だけを届ける。
本人の意思を代弁するのではなく、生前の発言やキャラクターのセリフにとどめる。
その声・言葉には郷愁を感じるものが好ましい。
また、これはAIによる再現であることを明示し、故人と会うための非日常的な空間を用意する。
遺族への同意が必要なことは、もちろんのことだろう。
松来未祐さんの声を、私はまた聞きたいと思う。でも、幽霊には会いたくない。
彼女が演じたキャラクターのセリフ、あの弾けるようなラジオトーク。
そういう形でなら、また会えるかもしれない。
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Illustration: Generated by MikeTurkey using DALL-E 3 (ChatGPT)
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